二冊目の日記

Jul, 2023

7/13 thu

ヴィム・ヴェンダース未公開短編特集@菊川 Stranger

 

勝手にしやがれ』のベルモンドがカンパーニュなんたら通りを崩れながらよろめくシーンを横から撮ったような感じで、ライフルを抱えた男がフラフラと前進する
色が変わる、オープニングでも「ショットを繰り返して染色した」みたいな説明書きがあった、さっきと同じようなシーンが映る

それにしてもさっきまで8時間かそれ以上、100分を1分に凝縮させることを価値としていた(か会社にいる間だけはと割り切っていたかetc)のであろう人たちが、頭を並べてとても代わり映えするとは言えないような画面を見上げているというのは、何だかまったりするし贅沢だ

ホワイトノイズが心地いい、早稲田松竹のゴーっという地下鉄の音、渋谷のヒュートラかどっかで仕事帰りに見た『デッド・ドント・ダイ』のオープニング、あの映画もこんな感じだった

オフビートっていうよりは、呑気な感じ 呑気というのは素晴らしいことだ 映画って呑気なもんだな

————

幹線道路の交差点、多分午前4時とかで、5階かそのくらいの高さから見下ろしている

車が通る、1台目は直進して、時間差でやってきた2台目がふわーっとスピードを落として左折する、人っこ一人いないのに、信号を守って律儀なものだ

昔家族でディズニーランドに行くときは帰りが大体深夜1時とかで、その時だけは近所の松屋に寄ってドライブスルーで牛丼を買ってもよかった、誰が禁止して誰が許可するわけでもないが
テイクアウトした牛丼を、ピクサーの映画を見ながら食べたりとかしていた、父親は感動シーンでいつも真っ先に涙していて恥ずかしかった、父親は最近50歳になった

カメラが下に降りる、意外と街角だ、電話ボックスから女が出ていく、鳩が1羽、ジョンレノンのような横顔の男がタバコに火をつける、マッチの火で火傷しそうになる、鳩が地面を啄き出す、鳩が地面を啄き出す 明け方だ、青い なるほど昔のボレックスで撮るとこんな風になるのか
明け方は青だった、青い明け方とそうでないのがあった、周りが青く澄んでいて静かで、そんな中で歩いているとき、何かが多少はマシだった
明治通りビッグボーイの隣のドンキ、少し下り坂になったアスファルト、あの時はそんな風だった

画面が白く発光して、またさっきの交差点、まだ日が昇っていないが今度はやけに車が多く渋滞気味、テールランプの赤が連なって進まない、出勤?そうかもしれない、井上さんがパリに留学していた頃、家を出る時もまだ暗かった、パリジャンは暗い中でカフェに立ち寄りエスプレッソをぐいっとやって仕事へ出かけるとか言っていたが、そういう感じか にしてもここはドイツだっけか、ドイツだったとしても大体そんな感じなんだろうか

テレビの中で綺麗な女の人が身体を揺らしている、バンドがギターを弾く、手首にミサンガみたいなアクセサリーをしている、レスポールか、というかミックテイラー?、ボーカルはミックジャガーに似ている、てことはストーンズだ、ということはさっきの女の人もミックジャガーだったということなのか

今度は夜、地面が濡れていて、集まって一つになったり離れたりするヘッドライトの白が漁火みたいで、その上の街灯も白く、何だか秩父とか四国のどこか辺りの、年に一度の屋台が立ち並ぶ感じの張りきった地元のお祭りのようだ

夜といえばヘッドライトで、テールランプは明け方のイメージしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

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22:56 都営新宿線馬喰横山

開いたドアの間のホームには青いベンチが5席、向かいには『吉田類の愛する低山30』の車内広告がある。ローファーが汚れている。SerifとSans-serif

人事をアテに酒を飲む会、こっち側とあっち側—「問題はあっちだよね、なんとかしないとさあ、」—、上層部なりの悩みの種、貸し借り、不仲、ランチ、てい・・日経ビジネス、長いナイフの夜、インバウンド需要、貢献、古いだけでおれのiPhoneは汚くない

 

“命の価値”を口に出して英訳してみた時にvalue lifeとか 音でギョッとならない、か

 

「自分以外の人間を**だと思ってるから」とか「世界を見下している」とか、別に2年目もどうぞちょっかいだし続けてもらって構いませんが、思ってないので思ってません以外返すことはありませんので

 

お金持ち・選ばれること・選ぶこと、に×印を付けるのに、時間をかけすぎだ

Jun, 2023

ピクミン4、発表されましたね。

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ところで、2週間くらい前にコロナに罹った後遺症で味覚も嗅覚もなく、醤油なのかポン酢なのか、コーヒーなのか水なのか紅茶なのかもわからない状態だから料理のモチベが削がれ、大味の胡麻ダレをかけた具なし冷やし中華やらウィダーやらを主食としていたが、これは多少自傷的な気もするからいっそのこと思いっきり香り高い面倒な料理を作ってやろうと思い、赤海老を数尾買ってきて、夕方から缶ビールを飲みながらちまちまと殻を剥き、身はちょこっと醤油を垂らしてつまんだりもしたらある程度海老の甘さを感じたのでこの試みも半分くらい上手くいったなと思いながら、頭を潰して屑野菜と一緒にオリーブオイルで炒め、アルミパンに味噌が焦げ付きこびりついてきたら少しの料理酒(最近冷蔵庫に白ワインを常備しておく習慣が消えた)でデグラッセし、海老の殻が浸るくらいの水でゆっくり煮込む。灰汁を取りながらある程度コトコトしてきたタイミングで一度濾し、それをまたアルミパンに戻して量が大体半分になるまで煮詰める。

その間コンビニにビールを買い足しに行こうとエレベーターを待つほんの少しの間に右手を見やると割と丸めの月が靄がかって見える。

実は元々は海老の予定ではなくて、日曜だしイワシを丸々買ってきて刺身とパスタ・コン・レ・サルデ(イワシ・パン粉・フェンネルシチリア郷土パスタ)にしちゃおうかななんて炎天下の中近所の魚屋まで歩いて行ったところ今日は仕入れをしない日でイワシも酢で締めた刺身しかないとのこと、近所のスーパーにもまるで見当たらない。松の実もレーズンも買ったし、イワシをエビに置き換えても美味いだろということでサミットで安くなっていた赤海老にしてみたわけです。

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もちろんフィノッキエット(野生のフェンネル 南イタリアではそこら辺に自生しているらしい)などないので、ベランダ産パセリで代用したりそもそもアンチョビさえ省略したりとコン・レ・サルデ要素皆無のパスタは、どうせならとディチェコを使った甲斐も虚しくほのかに海老の香りはするかな程度でほとんど味わえなかったが、たぶんこれ相当美味かったはず。久しぶりの買い出しで調子に乗って高い牛肉とかパッケリとか色々買ってしまったので、ぜひ食べに来てください。

 

コロナの後遺症をコンプリートしており、背中は痛くて1時間も座っていられないし本も映画も身体に入ってこないし外に出りゃふらつくしで土日もただスマホ片手にベッドで横たわるだけの生活を続け、ひたすらネットサーフィンをしてアメリカの動物を調べたりしていた。

www.gousa.jp

このサイトのNo3におはしますレイヨウジリスの説明と顔がかわいかったので

レイヨウジリスは暑さが大好きです。レイヨウジリスは、「ヒートダンピング」と呼ばれる熱低減システムを利用して生き延びています。つまり、日影の地面の上に脚を大きく広げて平らになるのです。

YouTubeでヒートダンピングなるものを調べてみたら全然かわいくないてか怖……
写真だとかわいいが

Harrisレイヨウリス - レイヨウジリス属のストックフォトや画像を多数ご用意 - レイヨウジリス属, アメリカ合衆国, シマリス

 

こっちのジリスはかわいい(サムネ怖いが)

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今月のプレイリスト

The Ohio Untouchables "Forgive Me Darling" (1962)

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開始数秒でむむっとなりました。

これ、オハイオ・プレイヤーズの前身って知りませんでした。リーダー格のRobert Wardはsound like系の動画もあるようなギターヒーローらしく、ChetともBranko Matajaともサーフ系とも違う彼なりのトレモロ観。あんま見たことないスタイル。海ドライブ誘ったら手ぶらで来そう。好みです。

Ry CooderとNick Rowe(じゃなくて良さそうだけど)とやってる動画もありました

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Standing on the Corner(2018)

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無双者(むそうもの)であるGio Escobarがここでもやはり無双している動画。

途中出てくる"Girl"のテーマカッコ良い。

 

Astrud Gilberto "Look To The Rainbow"(1966)

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Joãoよりも先に、漠たるブラジルの土地のイメージを教えてくれた人。

気が向いたら訳を載せるが、Randy Newmanの"Dayton Ohio"とも通ずるものがある。口承・読み聞かせにある密で澄んだ時間の記憶がだんだんと風化していく過程で、今一度静かに叱ってハッと思い出させてくれるような曲。このテンポと声色で口ずさむように諭してくれる人が今いるだろうか。身が引き締まる思い。

'Tis a rhyme for your lip And a song for your heart,
To sing it whenever The world falls apart.

 

Van Morrison "Joyous Sound"(1977)

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選ぶか迷ったが

ジャン=ピエール・デュピュイ『カタストロフか生か』を読んでいる間、ことあるごとにこの人がチラついていた。このあっけらかんとしたよく通る歌声がすごく悲しく聞こえる。

会社の飲み会にいると、いつでも自分は(もちろん本当に誰でも)おかしくなり得るなと思う。陰謀論ハマったりし始めたら火炎放射器なりピットブルなりで目を覚まさせてほしい。

 

Glenn Gould "Mozart, Piano Sonata No. 13 in B-flat major K. 333"(1967)

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井田さんととっくんさん家でグレングールドの話したから夜中よく流してた

 

Feb, 2023

2/26sun

昼前に起床。

久しぶりに河野さんと会ったら、髪の毛はすっかりなくなり目尻の皺が70歳のお爺さんみたいになっていて、そんな風貌のせいか話し方まで老人のそれになっていたというさっきまで見ていた変な夢を思い出しながらシャワーを浴びていたらボディタオルにシャンプーをつけそうになった

前々日くらいにビストロさての話が出たので、ランチを食べに行く。2品分のレシピをもらう。古本屋で数冊本を購入。

あながち間違っていないなという落とし所が最近妙に多い。

夕方からドン・シーゲル『ドラブル』(1974)を菊川ストレンジャーで鑑賞。

この冬食べたもの

以下時系列順

トマトスープ(上海味道@水道橋)

大きくて甘い人参がごろっと入っていた
晴れた冬の水道橋の空気が気持ちよかった

 

・グリークサラダ&ムサカ(自宅)

感動的に素晴らしいディナー

 

・鰯と柚子のパスタ

旬の食材を使う楽しさ

 

AMARO DELL’ERBORISTA VARNELLI(ピコン@山下)

みーくんが薦めてくれた薬草酒

 

・ブリック(自宅)

クリスマスイヴに作ったチュニジアの春巻き
春巻きの皮に裏漉ししたなめらかなマッシュポテト、クミン・シナモン・コリアンダー等と煮込んだミートソースを真ん中に窪みができるように並べ、生卵を落としたらこぼれないように綺麗に包んで揚げる
手づかみでかじり付いたらとろっと半熟の黄身が溢れ出る
チュニジアでは花嫁の母親が花婿のために振る舞うもので、花婿は中の卵がこぼれないように食べるのがマナーらしい
信じられないほどうまかった

 

・そば(おばあちゃん家@足利)

 

・にしんそば(加賀@初台)

 

・プレヤサ(ロス・バルバドス@渋谷)

チキンをレモンと玉ねぎと煮込んだセネガル料理

 

・梅と赤ワインのパスタ(自宅)

この冬のスペシャリテ
微塵切りにしたニンニクと一緒にベーコンをカリカリになるまで炒め、コップ一杯の赤ワインでデグラッセ 固めに茹でたパスタに赤ワインをしっかり煮含ませてたっぷりのチーズとバターで濃度をつける

 

・アッシェパルマンティエ&クスクスのサラダ(自宅)

クスクス好きになりたい

 

・アボカドのスープ(自宅)

ミカサトゥカサのあの味には程遠い…

 

・チーズパンプディング&朝食プレート(自宅)

夜に食べたが朝食の良さに気づいた
主食をガツ食いするのではなくスープやサラダも交えて適量ずつ食べる満足感

 

・目玉焼きのせご飯(遠藤さん家

固めに焼けた目玉焼きをご飯の上にのせてかき混ぜてから食べる
韓国ではスタンダードな食べ方らしい
おばあちゃんが昔よく作ってくれた卵ぐじゅぐじゅご飯に似た味

 

今月のプレイリスト

Magalí Datzira "Des de la cuina" (2023)

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スペインのダブルベース奏者で"Des de la cuina"="キッチンから"という意味らしい。

ダイニングテーブルで書き物をしているところとか、最後の方の膝にプレートを置いてトスターダみたいな料理にかぶりつく彼女をキッチンの入り口から映したショットがとても良い。
ダブルベースの、幽かに音程が上下したままで霧消していくサステインの音には、ただただ心地いい手触りがある数歩先で、オリヴェイラの訥々とした語り口から漏れる、言葉として成形される前の「音自体」というような━━吉増剛造のいうところの「赤子のような寄辺なさ」のような━━息遣いにもある確固とした抵抗の力が、その陽性の音色の陰に僅かに感じられる。

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そのようなものとしての根源を掴むために、それを妨げるあらゆる「フィクション」を、おそらくは「制度」と呼び慣わされているもの、……その最大のものはやはり言語でしょう、……その向こう側、あるいはその奥底か下底にあるものと出逢ってみたい。

***

「制度」というものは、どうしても源初のなにものかの起ちあがり、……わたくしがその底にふれようとしているもの、赤子のような寄辺のなさ……を、「作品」として固定させた瞬間に、固く凝固させてしまいます。作品とは、喩えて言えば蝶の標本のようなものではないでしょうか。蝶は、ひらひらと飛んでいたり、花の蜜を吸っていたり、あるいは交尾をしたりします。もっと言えば、子供のときは芋虫で、葉を囓って、糞をどんどん落とします。そういったもののすべてが「蝶」なのですけれど、展翅された標本では、……たとえいかに美しい姿にされていても、……そのような蝶の「ほんとう」、その赤子のような寄辺のない「瞬間」は、見いだすことはできません。

***

わたくしは、何か根源のようなものを求めて、がりがり紙に字を書き付けたり、目をつぶってインクをぶちまけたりと、ある「行為」を行っているわけですが、重要なのはその行為自体、それを行っている過程の方に、そのまた影の方にあるのであり、あるいは虚の歩行の方にあるのであって、出来上がった「作品」というのは蝶の標本のようなもの、一種の抜け殻なのかもしれない。

 

吉増剛造『詩とは何か』(講談社現代新書、2021年)、245,246頁。

オリヴェイラは↑で"What the cinema is draw a shadow of that moment. "(that moment=既に過ぎ去ってしまって、もはや現実に本当に存在したかどうか確信がもてないmoment)と語っている。

実際にはあったにもかかわらずなかったと思われているもの、もしくは誰かの都合でなかったことにされているものを、確かにあったのだと目の前に提示して見せること。

こうしたことをラディカルかつ平熱で(←ここ大事)やっているのがストローブ=ユイレなのかとも思うが、ここらへんのことはセルジュ・ダネー「眼のための墓場」(『カイエ・デュ・シネマ・ジャポン/映画の 21 世紀VI ゴダールストローブ=ユイレによる映画』所収)や小澤京子「ストローブ=ユイレ、量塊的映画」(『シネマの絶対に向けて』所収)に詳しい。

 

Kitchen "Foggy Trees"(2019)

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Hope is a picture of me kneeling on your couch

In a dress like a feather with some red around my mouth

Pull me down, I'll sink here with the stupid little thought

You're so kind but if I see you I will see just how I'm not

 

***

 

When the winter ends 

I will see you once again

Bright as I can be

それとこれとは別の話で、ここ最近になって、Hope is a picture of  xxx の xxx が、ベッドの上で天井を見上げながら縋り付くものでも、松竹から西早稲田のアパートへの帰路で現実とスクリーンの中の出来事のあまりの差に打ちひしがれながらのしかかってくるものでもなく、もっと軽くて楽しい何かになった節がある。自分の中で "hope" の語義が変わったらしい。
友達の家で思いもしなかった角度から笑いのツボを突き刺してきたり、道を歩いているときに微風みたいに頬を掠っていったりと、後からやってくるときもよくある。
写真をよく撮る人の気持ちがなんとなくわかった。

彼のTwitterを見たら"been meaning to dive deeper into burt bacharach's stuff. always liked songs of his but there's a lot of great stuff. "というコメントと一緒に"The Balance Of Nature"のリンクを貼っていて同じ気持ちだった

 

Television "Prove It"(1977)

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彼のソロ作『Warm and Cool』に入っている"Ore" のパームワイン・ミュージックにも通ずる軽快さとそれだけでは到底ない変なアッパーさの感じや、ライブ盤『Live at the Old Waldorf』の"The Dream's Dream "から"Venus"に入るところのお決まりのかっこよさはしっかりやるようなところが好きだった。
晴れた日の午前の空気みたいな、何でもないけど妙に嬉しく清々しく心に残っている映画のワンカットみたいなProve It のギターソロ(3:17あたり)も。

 

その他↓

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【和訳】Billy Joel - Movin' out(Anthony's Song)

Anthony works in the grocery store
アンソニーは食糧品店で働いている

Savin’ his pennies for someday
来たる日のために小銭をためながら

Mama Leone left a note on the door
母のレオーネはドアにメモを置いていった

She said “Sonny,  move out to the country”
「ねえ、こっちに帰ってきなさいよ」

Workin’ too hard can give you
けど一生懸命働いたって

A heart attack
心臓麻痺になるのがオチだ

You oughta know by now
もうそれくらいわかるだろう

 

Who needs a house out in Hackensack
ハッケンサック*1の郊外に家を持ったって仕方ないだろう?

Is that all you get for your money 
そんなことのために金を稼ぐのか?

And it seems such a waste of time
そんなの時間の無駄だ

If that’s what it’s all about
もしそれが全てなら

Mama, if that’s movin’ up then I’m movin’ out 
ママ、偉くなることが全てなら僕は出ていくよ 

I’m movin’n out
出ていく

 

Sergeant O’Leary is walkin’ the beat
巡回中のオレアリー警部

At night he becomes a bartender
夜にはバーテンダー

He works at Mr. Cacciatore’s down on Sullivan Street
彼はサリヴァン・ストリートを下ったカッチャトーレさんのところで働いている

Across from the medical center

メディカルセンターの向かいにある

Yeah and he’s tradin’ in his Chevy for a Cadillac

やっとシボレー*2からキャデラックに乗り換えってわけかい

You oughta know by now

もうそれくらいわかるだろう

And if he can’t drive with a broken back

背中を痛めて運転できなくなっても

At least he can polish the fenders

泥除け磨きくらいはできるってか

 

It seems such a waste of time

そんなの時間の無駄だ

If that's what it's all about

もしそれが全てなら

Mama, if that’s movin’ up then I’m movin’ out 
ママ、偉くなることが全てなら僕は出ていくよ 

I’m movin’n out
出ていく

 

You should never argue with a crazy mind 

どうしようもないやつと話したってしょうがないだろう

You oughta know by now

もうそれくらいわかるだろう

You can pay Uncle Sam with the overtime

残業してアンクル・サム*3に納税するくらいはできるさ

Is that all you get for your money

でもそんなことのために金を稼ぐのか?

And if that's what you have in mind

そんなことを夢見ているなら

Yeah that's what your all about

それがお前の全てなら

Good luck movin’ up, cause I'm movin' out!

出世しとけばいいさ おれは出ていくから

I’m movin’ out

出ていくから

 

youtu.be

 

(November 1, 1977)

*1:ニュージャージー州バーゲン郡の郡庁所在地。ニューヨークのベッドタウンとしてみんなの憧れだったらしい。

*2:1970年代後半からパトカーとして使用されていた。

*3:U.S. (=United States)をもじったもの) アメリカ合衆国政府、アメリカ人の戯称。 政治漫画などでは、星模様のシルクハットをかぶり、赤と白の縞ズボンをはいた、あごひげを生やした長身の老人の姿に描かれる。(wikipediaより)

Don't look too far

正月帰ってきたときには手袋を持たず犬の散歩に出た事を後悔するほどだったのが、今日は上着を着ずに散歩に行った。春だ

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引越しのため足利と三鷹台の片道2時間半の道のりを往復する電車内で、漱石の『思い出す事など』を読み返す。

www.aozora.gr.jp

池辺三山に宛てた謝歌。

遺却新詩無処尋
新詩を遺却して尋ぬるに処無し

 

嗒然隔牖対遥林
嗒然*1 窓を隔てて遥林に対す 

 

斜陽満径照僧遠
斜陽 径に満ちて僧を照らして遠く

 

黄葉一村蔵寺深
黄葉の一村 寺を蔵めて深し

 

懸偈壁間焚仏意
偈を壁間に懸くるは仏を焚く意 

 

見雲天上抱琴心
雲を天上に見るは琴を抱く心

 

人間至楽江湖老
人間の至楽 江湖に老ゆ

 

犬吠鶏鳴共好音
犬吠 鶏鳴 共に好音

 

夏目漱石『思い出す事など 他七篇』(岩波書店、1986年)、16頁。

修禅寺で大吐血をし、ようやく生き延びた漱石が布団の中で書いたもの。感覚が研ぎ澄まされすぎている。窓の向こうに林を眺めていると、想像力が茂みをかきわけて広い道に出る。ずっとその奥の西日に照らされて道を往く坊さんが見えてくる。ぐんぐんとカメラは進んでいって、村の中にある寺の壁間にまでたどり着く、と急にカットが変わって雲が現れる。漱石漢詩はこのカットの切り替わりがとんでもない。色付けされるにつれて「黄葉の一村」の農民の息遣いだったり僧の下駄が畦道の石ころを踏みしめる音が立ち上がってくると同時にキャンバスそのものが伸びていくような節もあり、最後に「犬吠〜」で画の睛が入って絵筆が置かれる感じ。

夢繞星潢露幽
夢は星潢を繞りて露幽なり

 

夜分形影暗灯愁
夜分の形影 暗灯愁う

 

旗亭病近修禅寺
旗亭 病んで近し修禅の寺

 

一榥疎鐘已九秋
一榥の疎鐘 已に九秋

 

夏目漱石『思い出す事など 他七篇』(岩波書店、1986年)、

星潢=星だまり。いい言葉。「露」は葉先から露の玉がこぼれんとする様子。目覚めと眠りの境、天井の、屋根の向こうに広がる星空と縁側の側で茂る湿気を含んだ野草、そこをふっと吹き抜ける夜風が同一フレームに収められているとんでもないパンチライン

今こうして書いていて実感するが、このロマンチックさをジャストで過不足なく、つまりもっとも最良の方法で捉えるには、散文ではくどすぎたり遅すぎたりする。

小説だったりある種の音楽が、ゆっくりと離陸していって気付いたら上空を飛んでいる飛行機のような感じだとしたら、この人の漢詩は一瞬で異時間・空間に引き込まれてはっと我に帰る感じ。

 

そして「泫露幽なり」から「夜分の形影」のラインへのカットは映画、もしくはマンガの最良の瞬間にも似た趣がある。シャッターが閉じて次に開いたときには全然違う景色が広がっているという、ある種の魔力にも似た、もっとも当たり前で高貴な事実。

 

このエクリチュールが自然ひいては宇宙そのものをまとってしまうような感覚は石牟礼道子『あやとりの記』にもあって、ここでは深雪によって聴覚が覚醒する。

夕陽のひろがるのと同じ感じでみっちんには、いろいろなものたちの声が聞こえました。草や、灯ろうとしている花たちの声とか、地の中にいる蚯蚓とか、無数の虫たちの声とか、山の樹々たちや、川や海の中の魚たちの声とかが、光がさしひろがるのと同じように満ち満ちて感ぜられ、それらは刻々と変わる翳をもち、ひとたび満ち満ちたその声は、みっちんの躰いっぱいになると、すぐにこの世の隅々へむけて幾重にもひろがってゆくのでした。なんだか世界と自分が完璧になったような、そしてとてももの寂しいような気持を、そのときみっちんは味わいました。

 

石牟礼道子『あやとりの記』(福音館文庫、2009年)、64頁。

古井由吉曰く、

普通に人がものを眺める、見るとは、人が主体になってものを対象化することです。積極的な行為です。この場合は違う。受容です。向こうから、入ってくる。これは病後の衰弱のうちにあることなのです。自分から見るのではなくて、向こうから入ってくる。

 

古井由吉漱石漢詩を読む』(岩波書店、2008年)、24頁。

こうした「私」が消失していく感覚に向かい思い出すことが2つ。

一つは京都・蓮華寺のこと。

もう一つは去年の衆院選の日のこと、速報を見るために点けたテレビに太田光が映っていて、ツイッターには小田急バットマンのコスプレをした男が無差別に人を刺したというニュースが車内の映像付きで流れていて、リプライ欄では何千のいいねがついた大喜利合戦が行われていて、テレビも電気も消して横になったベッドの上
してやったり顔をした上司の顔を浮かべながらさんさんと歩く帰り道、天井と壁だけが感じられる夜

In restless dreams I walked alone

落ち着かない夢の中 一人で歩いていた

 

Narrow streets of cobblestone 

石畳の狭い路地を

 

Neath the halo of a street lamp

街灯の暈の下で

 

I turned my collar

襟を立てた

 

to the cold and damp

寒くてdampだったんだ

 

When my eyes were stabbed by

目が眩んだ


The flash of a neon light

ネオンのフラッシュで


That split the night

それは夜を引き裂いた


And touched the sound of silence

そしてsound of silenceに触れたんだ

 

And in the naked light I saw

それから 剥き出しの光の中で見た

 

Ten thousand people, maybe more

一万かそれ以上の人々を

 

People talking without speaking

みんな話すことなく会話をして

 

People hearing without listening

聴くことなく聞いていた

 

People writing songs

歌を歌っていた

 

that voices never share

決して分かち合うことのない歌を

 

And no one dared

そして誰もいなかった

 

Disturb the sound of silence

sound of silenceを破ろうとする者は

 

 

Simon & Garfunkel - The Sounds of Silence


www.youtube.com

 

****

地元に帰ったら、つまらなそうな男性コミックばかり置いてある歯医者は不動産屋になっていて、その向かいの本屋は大きな今風の美容室になっていた。

youtu.be

youtu.be

芸人のラジオを聴いていると、誰もが「ご時世」という言葉を誤用していてげんなりする。真空ジェシカみたいなスタイルの人たちでさえそんなありさまだから自民党が勝ち続けるのだと思う。品位やマナーを無視した生き方なんて選択肢はない。

 

****

銀シャリのお伽噺ep.53。橋本がとろサーモン久保田やこがけんご用達の眼鏡屋に行く話で、表参道の美容院行って暇だったから代官山の眼鏡屋に寄った、というエピソードに適当に相槌打つ鰻。

omny.fm

 

****

23歳になった。

おしゃれな部屋に住んだり、車を買ってドライブに行ったり、初めて会う人とお茶をしたり、白い壁の外に今以上の景色がたくさんあるのだということにようやく気づき始めることができている気がする。

Feel like I've seen a million sunsetになるときもあるけれども、うまく楽しくやっていきたいと思うます

youtu.be


www.youtube.com

*1:ぼんやりと。

20210715

もう3日程体調を崩している。今日は遂に38度に到達してしまった。

熱のときにしか思い出すことのないあの汗がどんどん出てきてもう先がない感じ、眠れない。体調を崩した時は食べ物にお金を使ってもいいような気がする それに正当な言い訳があるから堂々と一日中寝ていられるが、もうここ最近は毎日そんな生活だから嬉しくない。

一応は回復しようと努めるが、万全になったとて労働に戻るだけではな

本当はいくらでも変えられるのであろう未来が、決まり切った型でしか想像できなくなっている こんなものだろうと見通したような感覚に陥ってばかりだ 無限に作れるはずの択のうち4つくらいを交互に眺めてはそのどれもに失望して、現在どれか一つに近づけてさえいない自分にうんざりする

だから今はとにかく就職したい したらしたで結局戻って来たくなるはずのこの時間は今は緩慢な死でしかない

もう結局住まなさそうな遠い国への移住記事を調べたりしたくない

月から金が目まぐるしく駆け抜けていって、今日は疲れたからコンビニ弁当で済ませようって妥協が楽しくて、30分のバラエティーを見て布団に倒れ込んだら足の疲れが気持ちいいのが最高だと今は思う。

3/8(月) 金沢

4:00

アパートを出発。いつもの通り沿いのセブンに寄り、締め切りが迫っているエントリーシートをPDF化してカフェオレを買う。小雨がパラついている程度で、傘を差すほどでもないので、顔にひんやりと早朝の冷気を感じながら井の頭公園へと神田川沿いを歩く。まだ辺りは真夜中とさして変わりない暗さで、しかし21にもなると周囲を眺めるだけの余裕も出てくるものだと自分に感心している矢先、右手の竹林がカサコソと鳴ったのにびびり、調子の良さに苦笑いするような気持ちでいるのは、向こうに段々と脚を強めてきた小雨がかかってぼやけている井の頭公園駅の街灯が届いてきた辺りで、そういえばここはこの間鷺がいたところだと思い出し、水のほとんど干上がっている左手の神田川に目を遣ると、こんなこともあるものか、アオサギがつい5日前のあのままの格好で佇み低く声を住宅街に響かせていて、なんとも幸先の良い旅出である。

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4:42

吉祥寺駅4番線、中央線快速東京行に乗車。始発だというのに車内にはそれなりに乗客がいる。東京駅まで座るほどの距離でもないので、乗降口とならない方のドアに寄りかかってこれを書いている。この旅に持ってきた本は3冊。友部正人『歌をさがして』は、友部とユミさんが1時間に一本の各駅停車しか止まらないような海沿いの駅で下車し海岸線を歩き云々というエピソードが収録されていたような記憶があって、出発ギリギリで本棚から抜き取ってきた。

内田百閒『第一阿呆列車』の冒頭、<用事がなければどこへも行ってはいけないと云うわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。>の一節こそがおれをこの旅に押し出したと言っても過言ではない。とはいえこちらはまだ行き先は決まっておらず、というのも、漠然と目星をつけていた岡山にしろ金沢にしろ、終点を乗り継いで一旦米原までは出なくてはならないからで、まだまだ時間もあるので、そこは追々決めていく。

岡山だったのは、瀬戸内の穏やかな海を見てみたくなったからだった。一方で金沢が候補にあったのは、バッグに入っている3冊目、古井由吉『雪の下の蟹』の影響が濃い。古井がエッセイの中で言っていた”高度成長の喧騒から外れた悠長なテンポ”というやつに触れてみたくなったのだ。

 

6:51

次は根府川。首が痛くなってきて顔をあげたら、手前の道路が浮いていて驚いたのは、曇り空と灰色の海の色の近さに、境界となる水平線が消失していたからだった。

ハライチのターンを聞いているが、トンネルに入るたび電波が届かなくなるので本を読む。

 

7:28

三島で降車し乗り換えるが、先程から車内のロングシートに腰掛ける顔ぶれがほとんど変わっていない。旅行に来ているのに、熱海から程遠くないのに、学生服やスーツばかりの東京と何も変わらない通勤ラッシュ!

 

8:36

あれほど窮屈だった東海道本線も、東静岡、静岡と終点に近づくにつれ降りてゆく乗客の姿が目立ち始め、さっきまでの混雑がウソのような浜松行き。静岡駅はやはりターミナル駅なのだろうか。

 

10:12

もうどのくらいになるのか。しばらくスマホを握りしめたまま眠っていたからわからないが、少し前に浜松に到着し、新快速大垣行に乗り込む。やっとボックスシートで、こんな効率を度外視した無駄だらけの形状はとうとう東京を離れたのだという実感をもたらしてくれるが、こんなところにまで「現在コロナウイルスの感染・拡大防止のため〜」というアナウンスがしっかりと波及している。と、そんなことを書いているうちに豊橋に到着。

 

12:32

関ヶ原は一年前のような霊気じみたものは全く感じ取れず、小雨続きでどんよりしていた空も晴れ渡り、車窓に射す陽が眩しい。大垣でパンを買い、米原へ向かう。景色は田んぼ一辺倒で大しておもしろくないが、山あいにひっそりと切り拓かれた田の隙を、用水路が陽をキラキラ反射しながら流れていく様子が心地いい。

 

13:19

虎姫、河毛。車窓から外を眺めていると、一瞬遠くの木が空中に浮いて見えるような、あの海がひらけた感覚. と陽のきらめきがほんの数秒目に飛び込んでくる。一面緑のその奥を道路が通り、晴れも相まって車の往来がよく確認できる。そのもうひとつ向こうには海にしか見えない琵琶湖があり、その光景は海岸線に似ていた。

 

13:48

近江塩津にて待ち合わせのため小休憩。ベンチには座布団が敷いてあり、駅員室では私服のおばさんがこちらに一瞥すら向けず編み物に集中している。声をかけるのも違う雰囲気だったので、切符を見せることもせず外の喫煙スペースで一服。何やら駅の工事をしている。
同じく敦賀行きであろう旅行者たちが集まる待合室に入ると、自転車が置いてあったり、マンガも並べてある。

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15:18

敦賀から今し方通過した鯖江まで、一定に均等に同質のさびれ具合で、なんだか怖い。ファミマで缶ビールを買う。もんじゅ敦賀発電所のイメージからか。敦賀駅前は怖かった。構内や待合室には人も多く暖房も効いているのに、一歩外に出るとだだっ広い幅の道路を車が無機質に走っていた。
もうしばらく、電車の中には数時間来の顔馴染みも混じる観光客の姿しか見えず、地元民らしき乗客が見当たらないのも落ち着かない。明らかに背景から浮いているフォルムの建物が車窓から見えて、武生特殊鋼材ドリームサッカー場というらしい。

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15:47

待ち合わせのため福井駅で下車。駅前のハピリンという商業施設には2店舗ほど(がぶりチキン)が入っている小さなフードコートやアンテナショップが並び、こういうところで高校生や中学生がたまっている光景を久しぶりに見た。
最上階の、福井駅周辺が見渡せる、天井から床までの大きなガラス窓にもたれかかる形で地べたに座っている女子高生がいてうれしかった。地元でよく目にしていた光景。誰も知らないご当地CMポップスみたいな曲が控えめな音量でかかっていたのも センター街とは全く違う。

さっきまでなぜか心配していたけど、ある程度栄えているみたいでよかった。

ハピリンの前にかかっている大きな電光掲示板に”首都圏 正念場の二週間始まる”とあって、自分が今福井にいるのだと思った。

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